映画Cats 復権のために

映画Catsは観るかどうかすごく迷った。20年前ブロードウェイで魅了されてから、ビデオで見続けCDを聴き続け。

当時NYの田舎町に住んでいたので、年に数回ミュージカルを観させてもらっていたのだけど、Catsは格別だっとた。子供向けとなると○ィズニーが主になるが、Catsとその他では音楽が別次元。多くのミュージカルにおいて音楽は演劇の装飾のような扱いなのに(それはそれで長所がある)、アンドリュー・ロイドーウェバー(以下ALW)の作品は、音楽が物語を進行させる。

彼の作品は音楽がないと成立しない。どこまでも音楽が主役。

あまりにも思い入れが強いので、評論家たちによる「後悔している」というコメントがショックで、映画は結構迷っていた。つまらないだけならまだしも、後悔は笑えない。

しかし推薦してくれた人がいたので、勇気を出して観てきた。

 

ええ、ほんと、素晴らしかった。

え、なんであんな悪しざまに叩かれなくてはいけないの?集団暴行では?

というわけで、前置きが長くなりましたが、原作をある程度知っていて、視聴を迷っている人たちの背中を押したく、舞台版との違いを踏まえつつ「見なきゃ後悔するぞ!」という感想文を垂れ流します。

この自粛ムードで映画館を推奨するってご時世的にどうなのかなと思わないでもないですが、推薦したいという気持ちは、別の問題なので、…迷っていないで公開初週に行けばよかったな。そしてさっさと感想文書けよ。

 

※下馬評とか無関係に観るつもり!という人は、私の駄文など読まずにまっさらな気持ちで映画館に行ってください。

 

なお、「いかがなものか」という演出がないわけではないけれど、そういう批判はすでに溢れ返っているので、自分はあえて触れません。

そして、この場で比較対象とする舞台版は、1980年代のオリジナルキャストの音源と、2000年頃のブロードウェイ演出です。その後のアップデートには疎いですし、四季版も観たことないです。ご容赦ください。

 

■踊り

舞台は2時間以上歌って踊らなくてはならない。役者はもちろん歌と踊り両立できる人になる。映画ではある程度その気遣いを捨てられる。

こんなに激しい踊りで歌い続けることは、舞台では恐らく無理では…。

猫っぽさを出すことにかなり注力してきていて、踊り自体もバレエ主体になっている。カメラワークが惜しい気もするけれど、バレエダンサーの身体に惚れ惚れする。

こんなに動くと思ってなかった。

 

■歌

映画だと、「囁くように歌う」ことが可能となる。歌い方に幅が出るので、猫ごとの個性も出しやすい。

コーラスパートで、曲ごとの主役猫の声が埋もれずにちゃんと聞こえてくるところもよかった。

 

■音楽

ALWご本人が監修しているので間違いない。最高の音。「耳が幸せ」。映画館で見る最大の利点は音響。音量のダイナミズムもよいし、どうしてもCGが嫌な人は目瞑っていても良いのでは。

全てオリジナルからの編曲が入っている。使っている楽器が変わっていたり、リズムの刻み方が変わっていたり。

現代風に垢抜けたと言えばいいのだろうか。オリジナルの音楽を古いと感じたことはなかったけれど、こうして新しいアレンジを聴くと目が覚める。映画版のCDも買ってしまいそう。

ここでこういうパーカッション入れるんだ、あ、テンポ揺れてる、うわ、えそう来る?くっっ、やばい、色っぽいなにこの音、うはっ、げほっ、そういう悶絶ポイントの砲火。原曲知っている人ほど陶酔すると思う。ALWはわるいひと…

あと、映画を見ていて気が付いたのだけど、Catsの音域って、オクターブの上げ下げすれば男性でも女性でも歌えるよう設定されている。凄いな…

 

■衣装とCG

さんざん罵倒されていたCGのキモチワルサについては、本国でのリリース後、修正が入ったらしい。ロードショー始まってからの異例の改良版配信。日本では改良版で上映されている。

だからなのか自分は気持ち悪さは一切感じなかった。衣装やメイクは完全に舞台と変えてきているけれど、舞台版のメイクや衣装を映画館の大スクリーンで見たいかと言われると正直微妙なので、これでいいと思う。

オリジナルのCGが気になる人は、You Tubeの初期の予告版を漁ると、これかな?というものが少し見られます。

 

■ストーリーと演出

Catsにストーリーを期待しても…エリオットの原作読めば何かわかるのかもしれないけど…ひたすらALWの天才的楽曲を浴び続けるMV集です。

というのは3割冗談として、舞台版ではできないキャラクターの掘り下げや脚色をやってきている。微妙な表情とか、猫同士の細かな関係とか。舞台版は自曲がない猫のことはあまりよくわからない。おそらくほぼ初期設定がない。映画版魔術猫氏、可愛すぎる…

ところでSkimbleshanksの演出は、このために映画化したのでは?というほど素晴らしい。ほかのレビューでも同じような感想がちらほら。私は号泣した。

舞台のパントマイム風Skimbleも大好きなので、Youtubeの公式動画張っておきます。

youtu.be

 

■安心感

ロングラン公演は役者にとってあこがれの舞台となる一方で、履歴書のための経歴になるというか…悪く言えば時々邪念のありそうな役者が混ざる。気のせいかもしれないけど。

あと、週に8公演もやるから、ちょっと緊張感がないかな?と感じられる日もある。ちょっと音程ずれてるなとか。キャッツは表現の幅が許されている作品だと思うので、がっかりリスクは低そうだけど…

そういうムラ含めて舞台の味なので一概にムラを悪いとは言わないけれど、映画だと大人の事情をクリアできれば最良の配役・最高のテイクを採用してくるので、安心して見られる。曲ごとに拍手が入る舞台版ではなかなか得られない緊張感もあって、新鮮だった。

 

■原作知ってる人ほど2回見ましょう

だらだら書き連ねてきましたが、最後に一つ。

Catsに限らず、原作知っている場合は、2回見ないと穏やかに鑑賞できないと思う。

1回目って間違い探しに徹しがちじゃないですか。私だけ?

あれ、このパート歌うのこの猫?この猫の年齢変えた?新曲邪魔じゃない?歌詞変わってる?ここはもっと声張るところではマンゴジェリーの曲慣れないなぁ云々。

繰り返しますがCatsに限らず、ハリーポッターでもレミゼでもオペラ座の怪人でも全部自分はそうなる。最初に接した表現のインパクトはあまりに大きく、別演出を受け入れるには予習が必要。

だから、一度目は「そういうものだな」と認識を得るための予習として、2回目が本番だという心構えで挑むとずっと好意的に鑑賞できると思う。時間も金もかかりますが。

今思えば、米国人がショックを受けたのは、CG問題はともかくみな舞台版に精通しすぎているためでは…。

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ここまでお読みいただきありがとうございました。映画版散々持ち上げましたが、もちろん舞台ならではの良さも存分にあります。

Cats聴きすぎて乗り物酔いみたいになっているかぼちゃでした。

(酔いながらまだまだ聴く)